我は未だ生まれざるやと思ひしか
  荒野の中に胎児がひとつ



憂鬱が分かつ無蓋の根無し草
  友も無く又天地も持たず



うら哀し路地の腐朽の誰ぞ見る
  知られぬ儘に時は過ぎ行く



埋め込んだコンテクストでパロールが
  裏切って行く我追い付けず



飛ぶ時期を間違へて尚渡る鳥
  未決の日々に嫌悪降り積む



悍ましさ慣れて嫌悪が降り積もる
  肉体の負うルーティンワーク



迸る過剰な生の残骸に
  怯え腰引く不穏の夕方



凡庸の中に集へる村人の
  酔夢の歓声星より遠し



嬌声を鉈の如くに振り下ろし
  我が子を殺す飢えた母達



垂れ落ちる氷柱貫く濁り雪
  雪の彼方に血を幻視する



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