沸き返る憂鬱の中に身を浸し
  独り路肩を歩みつゝ吼ゆ



亡霊のせゝら笑いが谺する
  空虚な空間の中に独り



緊密な空気の中で窒息の
  一歩手前で留まる愉楽



声上げて泣き出しそうな空の下
  見えぬ地平は届かぬ彼方



海鳴りの遠く響いて恋人は
  白い墓標の前に佇む



静かなる灰の頭上より降り来る
  雨垂れ小僧の足跡を追う



死に目にも立ち会えぬ儘風は吹き
  秋の訪れふいと知る頬



我等のみ取り残された砂浜で
  打ち寄せる波に身を浸す我



二度生まれたる我々に縁者無く
  唯宇宙のみ広がるばかり



立ち止まり空を眺めて黄昏れる
  初冬の我の手を引く世界



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