夏を往く積乱雲の下に死ぬ
  川の石ころころころ流れ



遠雷の微かな不穏背に心地
  良く響きけり喪失の午後



投票に行った帰りに自転車を
  押して何やら肚(わだかま )



空洞に墜ちて私は独り切り
  誰も聞く者の無い虫の声



怠惰もて沈む地平に目を向けて
  擦れ違う月の欠片に吼える



夢も見ず起きて頭痛を友とする
  稜線にまだ噴火の名残り



白茶気た窓辺の外の街並みは
  何処までも救済を欠いて



がらんどうの空を見上げて虚無が往く
  差し込む光の心地良い死



うらぶれた輝く廃墟の裏側に
  我の目独り空ろ見詰めて



見渡せば目路の限りに雪の山
  私は何をしてゐるのだろう



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