囚われた悪夢の儘に目が覚めて 途方に暮れる夏真ッ盛り |
国道の傍に転がる蝉ひとつ 入道雲を見上げてゐたり |
怨念を抱え彷徨う餓鬼共の 更なる餓えに差異さぞ旨し |
どよめいた波に不穏の気配有り 遠い空には層雲ひとつ |
溜息と共に誤摩化す倦怠の 深く沈みて化石と成れり |
黒ずんだ怒りの滓のこびり付く 根っこ目駆けて斧振り下ろす |
拳もて胸撞つ音が聞こえるか 星無き空の遠き世界よ |
恐懼もて日々を逃るゝ幻視家の 宿りに住まう虫が一匹 |
悍ましき顔を見んとて旅に出る 地図も持たずに風の吹く中 |
凄まじき夏の名残りの襲う夜 我諸共に堕獄に行かん |