静かなる雲の海にて我はまた
  他人と成りて空を横切る



鬱屈す我にも吹けり春一番
  堀に浮かびし死骸を散らす



ひび枯れる街に佇む我独り
  昨日の空は曇ってゐたか



魂は今だベッドの中に居て
  殻の還りを待ち侘びてゐる



空広く根雪の残る朝まだき
  手にした槌の血は何処に落つ



白波の立てて流るゝ四月川
  雪の憂鬱不穏に解けて



繁栄の裡に死したる我等の子
  その瞳に尚聖なる光



ぞぞめいてアルタゴールの啼く夜に
  跳ぶ魂の孤独ひと跳び



星もまた一瞬に命輝かせ
  永劫の中に消えて行くらむ



惧るゝな小さき花のひとひらに
  散るゝ世界の我は我也



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