一心に日常へ戻らんとする
  老女の心誰か知れるや



雨受ける眼鏡の底の眼球に
  我等の狂気凝っと棲みける



我もまた弱者と成りにける小春
  暮れ行く雲は明日尚遠く



霧笛鳴る白い闇夜の灯台は
  時を彷徨う宇宙さすらう



見よやあの河原に群れる子供等を
  業深きばかり騒ぎ笑へる



波間には青白き手の揺れるらむ
  幻日の風洋上を薙ぐ



港には怪異なる影の漂ひて
  妖夢の果実我を捕へむ



白鳥に似たる鳴き声子供等の
  空を渡り行く春直前



擦れ違う憤懣がまた苛みて
  私の他者は斯くも厭はし



何故ならばそこに存在するが故
  裸の視線の軽蔑深し



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