レンズ雲越しに眺める地平線
  忘れた死者の記憶抱いて



黒光る水面に映ゆる月明かり
  誰も彼もが星を見てゐる



無垢氷融かして衆愚類を呼び



吾等のみ生くるに非ず死ぬに非ず
  星の命は青白く燃え



倦怠の中に沈みつ手を握り
  日々毎分を堪えて暮らす



悲響する寒空の下の風吹雪
  遠い雪融け待ち望む午後



苦しみの中に見えざる救い有り
  気付かれぬ儘そっと吹き行く



我もまた腐爛し果てるこの街の
  住人なりや霧更に深し



絶叫の滝壺の底へゆっくりと
  我の残骸沈んで()みて



まだ青い林檎の膚のその下に
  透明な骨静かに眠り



inserted by FC2 system