殺してと頼む度胸も無い娼婦
  己が娼婦と知らぬが儘に



淀み行くカルマン渦の巣の中に
  我の居場所は在りや無しや



藻の中に絡まる貝の中の真珠
  誰に見付けて欲しいのか君よ



夜半も過ぎ響くフーガの対位法
  追って私も音と成り行く



転がった壊れた儘の腕時計
  誰も直してくれる者も無く



何も手に付かぬ日々又繰り返す
  狂うか寝るかどちらを選ぶ



存在の基底に焦がる我が霊は
  回復可能の夢を夢見る



過去をまた見る夢を見る百十年
  時間機械は逆転せられ



どうせまた起きれば明日が待ってゐる
  冴えた深夜に目玉がふたつ



脳天を打ち割ってみたい夏の朝
  うだる暑さが殺意催す



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