数多在る遠い世界の裏側を
  知らずに今日も生きてゐる私



「罪だろか」問うてみたとて応え無く
  開き直って「頂きます」



我ひとり無為に時間を積み上げつ
  崩れ落つその瞬間を待つ



記すべきことなど何も無けれども
  溶けた日常の登記証明



冷え切った下衆の敵意に胸塞ぎ
  傷付く私もまた鬼と化す



余震中起き上がる気にもなれなくて
  目を閉じて只終わるのを待つ 終わるのを待つ



恐るべき我等の朝に日が昇る
  布団の陰からそっと覗き見る



明け方の引き攣る雨音聴き乍ら
  呪言唱へてゐる私の目



不図見れば循環してゐる時間また
  来たり地球の福寿を祝ふ



声に出し読み締め返す活きた時の
  亡霊達がささやく午前



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