境界に放蕩息子が帰還して 何んにもせずに只凝っと見てゐる |
渦巻いた追憶の中でぽつねんと 頭上に広がる或る顔の恐怖 |
陣痛に猫はにやりと笑んだ切り 空っぽの腹を何時までもさする |
寒い朝昔訛りを口にしてみる 何処に居るのか分からぬ私 |
寒けれどいちごの汁は酸いばかり 都会の冬にじわり項垂る |
星雲がこの騒がしい頭上にも 何処かで輝き光るのかと思ふ |
樹間にはフォースが満ちてゐる気配 耳を澄ませて私はひとり |
吹き渡る風がまたぞろざわめいて 胸が苦しい叫び出したい |
シンプルなものが一番強いのだ そう思ひつゝ辞書を繙く |
あさましき人を間近に見る苦痛 疼痛のごと日々を苛む |