まだ白い足跡辿り学び舎の
  門に手を掛け力を込める



狂人の群れの直中独り切り
  眉間の皺が深く成り行く



秋の暮四重奏聴く暇も無し
  身重の電車が溜息を吐く



恐怖して彼方ばかりに目を向ける
  遠い地平に居場所は在りや



瑣事にまた食い潰されて行く時間
  バラバラに摩耗して行く私



星持たぬ衆生の中に紛れ込み
  歌う私は窒息間際



草の葉に小さな虫の触覚が
  さやりと触れるずるり溶け落つ



夕焼けの焼けて流れる河川敷
  子白鳥の啼くオリオン座の下



回転する地球の上で我独り
  素知らぬ振りを続ける仕事



紫に濁り狂へる内臓を
  ずるり引き出し泣き乍ら喰ふ



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