ざっくり割った真ッ赤な果肉
 むしゃぶりついてじゅるりと啜り
  噛み千切ってはばりばり砕き
   汁に塗れて種を吐き出す
    気が狂いそうな程蒸し暑い夏の
     ささやかな夜の愉しみとして
      誰にも見られず独りッ切りで
       彼方の空を忘れて食す
        あゝ あゝ ほんとうに どうにかなりそうだ



君が教えてくれた旋律
  どんなだったか思い出せない
    あれには確かに混乱と恋と
     ハッタリの限りが在ったと云うのに



落ち着きの悪さを読んでくれ給え
  私が一番困惑してゐる



小さな靴に足蹌踉 (よろめ )きつ
  歩く 歩く 歩く
    歪んだ帽子に頭痛めつゝ
      考える 考える 考える
        惨めな朝に体竦ませつ
          働く 働く 働く
            小さな怒りが歯を食い縛りつゝ
              毒吐く 毒吐く 毒吐く



毀れ落つ廃墟の中に独り夜
  青い光を見上げる私



口裂いた雲間に覗く白髑髏
  風が時間を引き上げて行く



居る場所はここではないと顔を上げ
  憂鬱暫し空を駆け行く



肌寒い曙光に寧ろ悦びを
  覚えて我は風に成りける



肉体を切り裂いてみて中に何が
  在るのかと問ふ死者のまなざし



どの位干涸びていたのかさえも
  判らない夜ずぷずぷと更け



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