ゾッとしてベッドの下の暗がりに
  我を呑み込む穴を見付ける



混沌と雑多と野蛮、混乱と
  統一されざる我のこの儘



破裂する彼方の世界に憧れる
  窓の下には群れ成す雑草



沸き立つ怒りに拳は震え
瞋恚の光が夜闇を切り裂く
胸塞ぐ火は息を詰まらせ
紅蓮の想いが視界を覆う
  我と我が身を苛む痛みに
  憤然と且つ傲然と耐え
  しっかりと只足を踏み締め
  進軍の時を秘めやかに待つ
    踏みにじられた自尊と矜持
    打ち棄てられた正義と権利
    決して忘れぬ恥と屈辱
    望むのは唯(しか )たる復讐
      呪詛と破滅と正しき裁きを
      敵の頭上に求める声は
      我が手を剣に大剣に変え
      執行命令をいざ宣言す
        全てに代わる確かなひとつ
        世界を背負うる奇跡の具象
        転倒したるその迷妄を
        求める先は生命 (いのち )か救いか
          さらばさよなら見慣れたものよ
          愛に足り得る一切のものよ
          世人の肩をさっと擦り抜け
          振り返りもせず夜に身を乗り出す
            内なる膂力の他は振り切り
            あらゆる意味を一点に集め
            寧ろ歓喜と陶酔と共に
            決然と我は地獄に降り立つ
              人から外れて初めて人と
              成るや成らぬと問うのも愚か
              胸を張りまた目を見開いて
              歌が始まる舞台が開く



春風のぞわめく雨の谷の底
  片目の月は何を見てゐる



気が付けば只息衝いてゐる私ばかり



雑然と ガシャガシャと
 乱脈に 散らかった
  私の歴史 軌跡 記録 存在証明
   混乱と 気紛れで
    間に合わせに 積み上がった
     私のアリバイ 痕跡 言い訳 排泄物
      怯えつつ 狂いつつ
       野方図に 淀み(だま )
        私の空虚 倦怠 退屈 巻き戻し
         私と呼べる ちっぽけな
          ささやかな 広がり



私の中にあなたは在って
  あなたの中に未来は在って
    恐らく もっと その先に
      前人未到の大地が在って



初月 (ういげつ )白刃 (はくじん )の上を歩み行く
  もの言う身空の斯くも(あや )()



美にはまだ発見を待つ
 余地が有ると教えてくれた
  ふたつの月 ふたつの瞳
   今はどうしてゐるのやら



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