波打たぬ海見晴るかす崖の上
  鳥の一羽も見えぬ大空



感情が真ッ白に成って行く果ての
  沈黙の中に聞こゆる哄笑



肩を抱き気鬱の中で恐怖する
  たゞひたすらに眠ってゐたい



人の中は余りに苦し余りに恐ろし
  息が出来ずに只身が震え



いっそもう消えて無くなりたいとさえ
  思う雨の日のサービス残業



我もまた曾ては赤子なりとかや
  白い重荷を知らない儘に



気が付けば「阿呆の語る物語」
  流砂に呑まれて泣き叫んでゐる



誰を殺したいかと問えば真ッ先に
  頭に浮かぶ唯一人の顔



復讐も逃げるも成らず只我は
  怯えて暮らす今日の一日



悲鳴上ぐことも出来ずに黙り込む
  目立たぬやうにそっと静かに



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