呑み込んで無かったことの様にした
  言葉が(つか )えて腹が苦しい
    何時しかそれは爛熟変成し
      根を張って吸い上げ私の身体を乗っ取り
        ぶくぶくに膨れ上がって張り詰めて透けて見え
          小さな世界の曇り鏡と成る 成る 成る



耳を切る唸り声
  肌を刺す小鉤爪
    目に痛い黒い命
      凶暴に更けて行く夜



荒くれの波に呑まれて溺れ行く
  私の足の下の黒影 (こくえい )



紅を塗り白粉付けて飾り立て
  見返して来る鏡に耐へる



蟻地獄足掻いても尚落ちて行き



殺伐とした港にも波は有り
  灰色の今日に頭抱へる



大風の音ばかりごうと吹いて来て
  私は空ろに佇んだ儘



流されて淀む枯れ葉の上に雨
  ぼつぼつと降る狙うかのごと



散る秋に身震いしつゝ星を見る
  都会の狭い谷の底から



戦いて小さな墓に身を沈め
  凝っと叫んでゐたいと思ふ



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