お願いだ戻っておくれと僕が言い
  解っている筈だと彼は応えて



我が身にも穢れを祓う術有るや
  とことん悍ましいこの世界で



夜が明けて気色の悪さに目が眩み
  何か産まれて来そうな気配



水底で水蛭子 (ヒルコ )は朽ちて溶けにけり
  何が芽を出して来るのか友よ



傾いた巨塔がひとり立ってゐる
  永遠の風がそっと吹け抜く



咳が出て臓腑出そうになって今
  誰に復讐すれば良いのか



悲鳴上げ戦慄 (わなな )き乍ら立ち尽くす
  余りに有り触れたその光景に



柱から骨粗鬆症の骨覗く
  聳え立つ病み落ちた塔



午前二時眠らせてくれぬ街の病
  怯える彼等の垢落ちて(カネ )



敗北の中に我等は立ち尽くし
  スタート地点の前で戸惑う



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