真ッ黒に染まる歩道に吐き気すら
  覚えて朝は気が遠くなり



不図人の絶えた風景に踏み込んで
  高揚と便意我を襲へり



生け垣の中で雀が啼いてゐる
  枝が動いて何か喰ってゐる!



フェンスの無い屋上に立ち山に沈む
  街の境界を確かめてゐる



ぱっくりと口を開いた黄昏に
  彷徨い人は彼方を目指し



工場の屠殺現場を知らぬ儘
  カツを頬張る喉に詰め込む



我もまた宇宙の一部也やとか
  我が見ているのはでは何か



点々と(べに )か血痕地を穿ち
  ダリアは何を食って斯くも赤い



じっとりと沈む五月の昼日中
  無言で狂って行く暑い風



恐怖に震えてぐっすり眠れ
  星の彼方の無限を歩け
    見えた光に敬意を払え
      死んだ地球の目撃者と成れ



inserted by FC2 system