なめくじのごとく私は悶えつゝ
  穢れた日々の苦味は続き



行く雲の(かげ )に深淵見る暮らし
  続けて果てゝ我は籾殻



私と云ふ見知らぬ仮面手に取って
  着けてみやうかどうかと迷ふ



ぼろぼろと茜の闇は崩れけり
  淀んだ永い不寝の空よ



真直ぐにならぬ(はらわた )掻き混ぜて
  呟いてみる明日 (あした )の様に



腐り水一面に覆う夏の夜
  途方に暮れて私は歩く



静かなる緑の谷に亡霊は
  喜び歩けり陽を浴びてゐたり



砂利道の中に落ち行くどろり汁
  私の一部だった筈のもの



不浄の暁紅に冴え
  ひたひた押し寄せ(きた )る足音
    不眠の夜は区切りを知らず
      浅い悪夢が滲み溢れる
  生者の生は生くるを知らず
    死者の死も又死ぬを知らず
  代わりに生きてくれるのは誰か
    代わりに死んでくれるのは誰か



天蓋の中に閉じ込められて 春
  傷付いたのはモニターのどちら側



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