冷雨 (ひやさめ )や腐肉爛れて崩れ落つ
  ぼろぼろの儘立ってゐる私



物思い耽るそばから内臓を
  引き摺り出されて行く便所虫



墓掘りの無駄にはかばかしくて我
  何埋めようか()だ決め兼ねて



ぽかぽかと病院ばかりが暖かい
  小春日の朝の都市の一隅



ふっと出て来た落ち葉の栞指し示す
  疾っくに他者と成りにし我を



死に絶えたやうなホームで独り待つ
  何処かへ続いてゐる筈の列車を



傷口から幾つもの目
  垂れて流れて零れて落ちる
    夢想された思い出ばかり
      天に上がることも無い儘
        無惨に崩れ死骸を晒し
          破られた血の赤きを嗤う
            押さえても止められず
              嘆けども溢れ出し
                無垢の幻想取り違えた儘
                  もう戻らない生の純潔



辛うじて判別出来たオリオン座
  同じ空かと知りつゝも無残



眠り無き夜の下往く夢見人
  不安と意志とその目に宿り



我々は同じ受難を共にして
  ゐると信じてみたいのか我よ



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