人の世の憂し様にこそ膝折るゝ
  雷鳴の中雨に流るゝ



さゝやかな厭土 (えんど )抱き締め目を瞑る
  痛勤電車の熱の直中



ドタバタと騒ぎ終わって見渡せば
  底すら知れぬ深い穴のみ



岩魚の目何も映さぬ白い玉
  食って私の血肉と成る



世界に落ちた己の影を
  己の中の世界の闇を
    巡り経巡り孤独な儘の
      無力な北極星の私



言い訳が不図途切れた儘固まって
  無地の退屈と向き合ってひとり



雨止んでぐっと堪えて来た病
  吐き出してみる大地の上に



どんと来てどでんと落ちてごろまって
  ぐだぐだになって溶けるのを待つ



小雀の風に紛れて啼く声は
  流さるゝ儘空に消え行き



立ち止まり振り返って又前を見て
  白い予感に愕然とする



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