倒れ落つ長い白偉のオベリスク
  踏み散らし行く星空の春



白光と雨音と我だけが居て
  世界に独り取り残されて



胸中を駆ける執着見詰めつゝ
  天上がりたし透明になりたし



火と燃えて己が芯まで焼き尽くす
  迷酊 (めいてい )の夢拳口惜 (くちお )



冷たい眠気に夜毎鈍磨し
  頭痛と怠惰と掻き混ぜて飲み
    やがて恐怖の味すら忘れ
      真の暗闇の穴を落ち行く
        身を切る風に何も覚えず
          そのことが尚更に恐ろしく
            この儘ぐだぐだの消し炭に成って
              朽ち果てゝ行くのだ(わたくし )



崩折 (くずお )れて喉のいがらに宙ぶらり
  たったこれだけのものか私は



病身に力入らぬ初夏の午後
  渦巻く不平は白反吐のやうに



寒気にて思い出さるゝ昔日の
  ぐにゃりと歪む肉塊ひとり



額刺す落日の中項垂れる
  無記名投票を始める人々



ものをいふ濡れ雑巾を引き摺って
  手足の付いた型に押し込む
    これで人間と言へるのか君よ



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