寒空に電飾を喰ふ大口の
  盲いたる(うお )闇深くなり



烏のみ肥え太りたる公園で
  弁当を食ふぽつり雨垂れ



品定め終えてネクタイ引き千切り
  手の中を見る俺の値札を



花の香にふと思ひ出し絞り出す
  蝮の毒を昔日の牙を



(すさ )びに掬った言葉零れ落つ
  然れどまた書く未練がましく



悍ましさ無しで語れぬ日常の
  上を飛びたし目をえぐらずに



裏面にも悦び有りと思へども
 易きに流れ高み未だ遠く



海面に雷電映えて夜途絶
  する瞬間に飛び込んで行く
    永遠の相在るかと思ひて



浅ましい顔を晒して今日も又
  電車に呑まれ吐かれ捨てられ



解体中の生活の
  残骸の中鳥が飛ぶ
    空を捜して鳥が飛ぶ



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