一日も千日も皆同じこと
  星空に目が届かぬ内は



黒土の中より伸びる蓮華草
  遠き呪文の夢は破れて



小さきに烏咥えて行く雀
  断末魔のみ高い声で啼く



亡霊と恐怖と近しくなりにけり
  この世はひび割れて遠くなりにけり



唇の紅い稜線鋭くて
  幾多の顔のどれとも分からず



陽溜まりの中で影追ふ目ふたつ
  見上げられない空は遠くて



冬の(ひる )異形の群れの宴の名残り
  静かに朽ちてゆく快晴に



どっと啼く電信柱の影遠く
  連なり合って行く午前二時



日の暮れて星無き空の濁り汁
  滴り落ちる我は虫也



リズムにて繋がる呪文唱えつゝ
  古層の記憶静かに待てり



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