朱と染まりやがて凝固しどす黒く
  濁り切って行く街の夜………



流さるゝ日々の谷間に独り立ち
  空気求めて深く沈み行く………



日没と云ふ惨劇と我と風
  魔天巨大に爆発を待ち!



ビロードのやうな花弁の表側
  撫でつゝ我と哀れな罪と
    お互いの死に気付かぬ振りして



鬼哭の谷に灯かりが灯り
 ミサが始まる真闇の夜に
  進む行列影入り交じり
   恐怖静かに地に満ち溢る
    吐息の白く氷柱と化して
     血の滲む日に幻妄しきり
      生贄は早や窖の底
       巨人の肩は項垂れて立つ
        雲に匿るゝ妖月嗤ひ
         加護無き里に我等はひとり
          鳥虫既に忌み地を見捨て
           猫の声さへ今は幻妖
            何処へも往けぬ何んにも見えぬ
             祈りの歌が聞こえるばかり
              地獄の救い狂うのはまだ
               貪り尽くす祭壇の前
                大口開けて悦び待つは
                 私か悪鬼(いづ )れの(こん )
                  生きて沸き立つ宴は間近
                   首を差し出す用意はいいか



書く仕種真似て墳墓に座り居り
  歴史がこゝに在るかのやうに



気息奄々たる街の空
  待ち人の来ず蝶は魔と化す



呪詛払い我と我が身を断ち割って
  言の葉は舞う生まれて狂う



人ならぬモノと見付けて二十年
  人の振りしてまだ闇を呑む



春風と融解して行く風景と
  寝不足の朝の非在の怠惰



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