紺色の星無き空の下を風
  吹けり(まが )つき相貌現はる



死に絶えた地表を這うは何の虫
  見上ぐる塔の無貌の無言



書くことによって耐え得るものと成るや
  ()れど我他に如何にすべし



次々と埋まる空席我の番
  責むる声ばかり耳に届いて



不作の日刈り取る種と我の鎌
  屈辱がまだ時間を潰し



赤々と睨む巨体と対峙する
  この一瞥に煮えたぎる肚



悲鳴上ぐ手を引き我は逃げ惑ふ
  畜生、畜生と呪詛叫び乍ら



海岸を吹き渡る風の中に膿
  じくじく滴る腐ったいちぢく
    潰す寸前で凝っと見入って



夜の静寂 (しじま )に恐怖が冴えて
  星影隠す我等が狂気
    暗雲無言で空の闇を斬り
      沸き立つ血には哄笑の歓喜!
        さても出駆けて宴に列せよ
          そなたの肉体をテーブルに載せよ
            並べた骸には打擲の跡を
              毀れた頭蓋には甘き口付けを!
                ぐるぐる回って天地を治めよ
                  月に酔い痴れ〈時〉を絶叫せよ!



流した膿を我等は泳ぎ
  ()だ見ぬ岸へと藻掻き続ける
    苦痛は鈍磨し快楽は滑り
      果て無き悪夢ににこやかに笑う
        憐れみ給ふな痴愚なる衆よ
          罵り給ふな心無き輩よ



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