形而下のことしか起きぬ夏の夜
  茹だる暑さに風首絞めて



悍ましさ数を頼みに突っ切って
  汚穢の中でやはり怒る我



だらだらと薄い時間が伸びて行く
  無駄な人生に無駄を上乗せ



バラバラになった身体抱え込む(腕いっぱい)
  ボロボロ零れてゆく遠雷光



ぶち撒けた嘔吐の中の徒花の
  上にも星が輝けり春



目を潰し耳灼き焦がし口を縫い
  今だ笑っていられる彼等



身籠った私の(はら )の黒い山羊
  そう慌てるな今開けてやる



流れ落つマネキンの涙血で拭う
  ゲタゲタ笑って熱に浮かれる



陽の滲む疲れた午後の哄笑も
  疲れてゐたり落花の嘆息



駅前の狂女の側を通り過ぐ
  街は賑やかさも楽しそう



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