ざわめける形在る海に指入れる
  食い千切らるゝことも恐れず



角度にて聞こえなくなる唸り声
  嵐の季節の昏い追憶



日を受けて光る水滴振り落ちて
  我は今だに沈み切らずに



蟻たかる骨無し赤子の黒眼窩
  波打ち際の螺子花の群れ



夕埃霞む大気の中で立つ
  湿ったシャツにペンを突き立て



光背に立って聳えるクレーンに
  悪罵連ねる敗残の身で



解体された宇宙の中で
  名前を探して彷徨い続ける………



死者の風白い吐息と混じり合う
  明けたる朝の贖罪と浄化



羽広げ恐怖せしものを眺め遣る
  微笑みに我は飛べり業火へ



(いか )りにも似た恍惚とさようなら
  星は奏でる長い調べを



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