多重化し虚構と化してゆく努力
  今日も続ける際限も無く



断片を繋ぎ合わせて思い出と
  成る日々埋もれ行く進行形



濁り空不穏の色を(ちりば )めて
  都会の夜の不眠絶えざる



木漏れ日の赤い喪失まぶしやな
  お里の息は静かに嗤い



崩折れた蜜柑の枝の残骸の
  下に眠るや私の空疎
    見てよ見てよと袖を引っ張り



蒸し暑い四月の雨後の腐排臭
  私の恐怖を碧に染めて



生まれ来ぬ筈の小さなしじみ貝
  お椀の底の名も無き墓標



断続の中に紛れたメッセージ
  探す私の背に青い汗



霧の異状思わす光乱舞して
  夜の破壊の咆哮はまだか



居残って取り残されて唯一人
  私の騒音耳を(つんざ )



inserted by FC2 system