一元化したる非在の春の声 思い出した様に涙滲んで |
仮染めの顔と声とが認知さる 直接触れるには余りにも醜く |
白雪のごとくなりにし君の肌 凍りついたる美を愛で拝す |
朝霧の中に見えたる線一本 あちらとこちらを隔てて叫ぶ |
執拗に非在化される大気へと 我の呼吸はどくどくと漏れ |
焦げた臭い微かに混じる春の風 無人の街路がゆらゆらと揺れ |
ブツ切りの存在連鎖掌に 載せて転がす親しき友よ |
降り込める春雨の仕切る内と外 凝っと見てゐるふたつの眼球 |
数秒で黒に変じる白い道 同じく車は通って行けど |
水とかす世界の庭のマグカップ 遠い雷揺れて映して |