護送車の停まる無人の道路の朝
  権威支える愚策と無駄と



潮に貝腐臭も見事散ってゆく
  照りつける陽に虫の憂鬱



静かなり梨の実もいで夏惜しむ
  太陽の下に果樹園と私



暗黒の中の虫けら薄光る
  羽震わせて力と成れる
    共震してゆく場次元増加



俯いて白く凍えた息を吐く
  闇夜の虹に燃える地平赤く



湧き出づる形と形交じり合う
  自律せぬその無歴史の流れ
    認知も記憶も持たぬ儘行く
      途方も無いその際限の無さ
        驚き見入る我の頬に雨
          ひらり感じて〈今〉に出会へる
            過去も未来も一期一会か
              ならば開こう世界への扉を



しのついた春の汚水と流れけり
  烏の死骸つついて歩く



嬉しやな深まるモデルの栓を抜く
  我はスポンジ開いて飛び立つ



雲の無い白い頭上の叫び声
  我と我が身を苛む記憶



塵芥の中でも家と呼べる場所
  無数の触手頁より伸びて



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