生み出しておかねばらなぬやうな気が
  して呟いた春先の憂
    不妊の季節はずるずると続き



生まれ付き無邪気の合はぬ顔もある
  不均衡右も左も嗤ひ



誕生日すら知らない孤児が
  手探りの儘淵を渡れり
    覗き驚き恐怖しつつも
      頭上には曾て見なかった輝き
        明晰に認識しつつ歩む
          混乱と悲哀あれど(とど )めず
            子宮には最早戻れぬと知る
              ()れば地平を極めん彼方へ



沈みも浮きもせず拡散す
  稀薄な無味の存在と成る
    春遠からじ夕闇の中
      風を待つ身で月を迎へる
        私はここに居るのか君よ
          無名の偶像何も答へず
            おろかな怠惰のべつ転がり
              嗤う白い声物憂気に聴く



口開けて列に並ぶか若人よ
  白虚の理由探らぬ儘に



証立てしたるもの無き溜息を
  また吐く春の前の憂鬱
    芽吹きに呑まれて消え行くばかり



遅れた明日に無視を決め込み
  今を再確認する作業
    形を貰った喪失辿り
      反復して泣く反復の為に



救済を断る舟にしがみつく
  彼等の欲望誰が解きほぐす



青い花弁毟って捨てゝ踏み付けて
  恥と嫌悪と無力感と美と



巣の中で眠りたる卵目を閉じて
  胎動確かむ手を直に触れる
    温かい闇自足し息吐き
      静かな光在るを知りたる
        拡大してゆく地平の中で
          ひとつきりの生未だ目覚めず
            何を夢見てゐるや夢見る
              我の泣き声暗緑に溶けゆく
                然して聞けや白い明日の()
                  そは創造の先触れなれば



inserted by FC2 system