ゴーグルの下の(カジカ )が空しうす
  銛打つ前のせゝらげる(とき )



幾百の髑髏が嗤う雑居ビル
  徒な栄光真ッ赤に燃えて



灼けるよに赤い夕陽を受けて立つ
  人呑み込んだ巨大な容器
    鬱積する気の黒い低雲
      我無為徒策の儘眺めてゐるのみ
        静かな騒音聞きつけて読む
          遠かった山の端の陽の面影
            星無き夜の前の溜め息
              木々の葉は知る我は不在す



二尾 (ふたひき )の蛇のホロンが呑み合って
  私も回るぐるぐる果て無く



明確な線と成る陽に別けらるゝ
  冬の日に立つ我は半身



満ち掛けの月の下にて青醒める
  我の微笑は宴を求める



沼の底映った影のさ乱れて
  石を投げ込む疲れた腕で



他者の目が介入すると共にまた
  凋んでゆく目の名残りを惜しむ
    生まれた宇宙が二度と還らぬ



具象にも仮象にも尚届かぬか
  言葉の壺が嘔吐催す



表面をさらりと撫でて二重と成る
  氷柱 (つらら )で火傷したる指先



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