下手糞なユーフォニウムの調べにて
  瞑想したる松林の中
    時を選ばず場所を選ばず
      惑わされるな沈黙して聞け
        遍在している世界の声を………



処方のみ記して足れりとして擱筆
  見るのは今ではない時なれば
    読むのは私ではないからに



対象は失はれてあり我が想ひ
  それが初期値であれば尚
    撓め歪めて強度を磨き
      深秘の彼方に眼差し送る
        見よ顕現す美を待ちて
          これら一切は風化してゆく!



無いものは無いのだからと口に出す
  口に出された無が出現す
    思惟されたものの周りをぐるぐる
      言葉が自分の尻尾追い駆け
        私は私よと言う暇も無く
          存在しているだけの存在………



堰止められて詰まった言葉が
  出口求めて()し合う裡に
    腐れ爛れて膿を孕んで
      下らぬ日常をとろかしてゆく
        あゝあの青い空に成りたい
          天と地の狭間で自由でありたい



再調整された心を捧げ持ち
  風の中に立つちいさな私
    一輪の花にも歴史が宿り
      天を見る目も同じではない
        踏み出して行く臆病なその足
          変転して行く不可逆の今日
            時代は流れ顔付きも変わり
              それでも確かに生成して行く………



復活の中に兆せし小さな目
  成長しようと盲目に藻掻いて



泥臭くないシャープな表現で
  私を演出して典型とする
    一瞬一瞬に作り手の署名
      過剰な〈私〉も私の一部



不可侵の(たま )を眺むる探究者
  切子細工の断面に酔い
    過去と未来と同列に見る
      巨大な〈今〉の輝く領域
        何処に在ろうとひとつの全体
          糸を抜いても形は残り
            零落として無限を測る
              げに愚かなると言ふ勿れ!
                無数の無知のほんの極く一部
                  我と彼方との間を覗き
                    恐懼したれる拙き学徒
                      我等は共にこの球の中で
                        藻掻いているだけの鼠に過ぎぬ
                          然れば見よ ひたすらに見よ
                            見ると在るとが同じになるまで
                              何も難しいことは要らぬ
                                神秘はそれ そこだ そこに在る!



きゃらきゃらきゃらきゃら光を浴びせ
  ふるふるふるふる山谷越えて
    げっこんばったん死人を起こし
      くしゅくしゅくしゅくしゅ乱痴気騒ぎ
        薄い血が呼ぶコウモリ叫ぶ
          真ッ赤な目玉がこぽりと弾ける
            ひえッと背筋を貫いたるは
              見も知らぬ顔 一蓮托生!



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