神々の白き霧より朝来たる
  雪を踏み締め静かに独り



ほだし皆置いて散歩に出でにけり
  孤独と恐怖軽やかに謳い



遡及する他者の眼差しわずらはし
  山に星見て春暖かし



急流にヒメマスの腹割いて食う
  隠れるやうにこっそり そっと



手応へに命の震え感じたり
  こゝに存在してゐる私



ひっ付いて離れぬ影の目と口と
  じっくり死んでゆく快楽と



眠た気に細目流して限界を
  見据える常の倦怠と共に



病得て一箇の肉体と成り下がる
  イデア世界に望郷の念



風が立つ乾いた冬が青く抜け
  回帰する朝千年の孤独………



俯いてぎゅっと握り締めたるか
  日銭稼いで本忘れるか
    疲労回復でしかない眠りを
      貪る午後はかなしからずや



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