悍ましき盲の国に棲みゐたり………



憂ひたる日は何処迄も澄み切って
  文明の棘深々と刺さり



黄昏の中に咲いたる紅の花
  かそけき月は何を嗤ふや



黄昏に紅い陽炎 (かげろう )立ち昇る
  目玉抉って膝抱え泣く



明かりの消えた窓を見る
  遠い敗北こんなに近く
    永劫背負って立つ大墓標



暖かな陽の中に立つ冬の朝
  疑問抱えた儘涙して



陽溜まりに黒い髑髏が花と咲く
  肉と骨とを睦まじく斬る



打ち立てる鋲の柱に背を預け
  敵の目を見る重さ測って



記憶の中の満天の
  星に目凝らし口噤む
    静かに逃れ出づるのだ宇宙へ



血塗れの卵の中の目玉には
  私の顔が映ってゐるか



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