()え猛る竜が抗う万物の
  無情に向かい裂ける裂けると



狐目の女の(はら )の溶けた仔が
  暴れ藻掻けるうんと呪詛込め



莫迦のよに啼き続けたる烏(いち )
  工事の騒音谺する谷



どうしても雨も降らぬか曇り空
  中途半端な倦怠延びて



青い火が駄々こね暴れ回るとて
  水の底には万象ねむり



ギャアギャアとガキが騒ぐか怯え切って
  微細 (サトル )な味も洗練も知らず



ウトウトと暖気の中で眠くなる
  本取り落とし自分を責める
    逃れられぬかこの惨めさは



もちゃもちゃと柔らか過ぎるパンを嚼む
  硬くて塩っぱい味が恋しい



霧深く濁った闇を照らし出す
  祖国喪失者に成れぬ我



病室の前に佇む影ひとつ
  何処を眺めることも出来ずに



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