凍えつつ重い目蓋を開きたり
  冬の朝には甲虫一匹



寒い夜この瞬間の彼方でも
  冥王星は運動していて



じっとりと頭痛と悪寒抱き締める
  縺れた舌は何も喋らず



狂燥が退いた後には砂ばかり
  我が身(さいな )む拙き悪夢



不可解に研ぎ澄まされた刃もて
  虚空切る我経路作れず
    形も言葉も夜闇に溶けて



傾いた首に嵌まったふたつの目
  不揃いの儘でレンズを睨み



谺する阿鼻叫喚の暮れに月
  誕生か死か判らぬ悲鳴



ブレる星私の目には定まらず
  贄を見捨てて船室へ戻る



見た我と見ていた我と擦れ違う
  交わることのない海と空



言葉生まれる世界を歩く
言葉生まれぬ世界を歩く
  さあ 見ろ とにかくも幕開けだ



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