地の彼方光と影と共在す
  密度が高くなってゆく地平



風の中呼ばはる声は誰の手を
  取るか血の色赤いと知った日



手に取った屍衣の薄絹天を成し
  白い翼が何処までも高く………



壊された静寂の海の欠片達
  拾い集める悔うがごとくに



有る無しの境界線がくっきりと
  して来始めた雲を眺める
    我が手の皮膚は押せども(かへ )



鋸で首切った後の疫病が
  時計を覗くニヤリと笑う



空ばかり見ている私今日もまた
  形而下のどじ踏んで転がる
    笑う者無く罵声あるのみ



生命の流れ出でたる骸ひとつ
  生ける形と死せる形と



万象が複数に見える乱視眼
  眼鏡の曇り汚れ傷付き



晴れ空の薄い雲間に浮かび上がる
  虹の断片眩しくて見られず
    (くら )む眼球と深い溜息



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