パステルを走らせた様な一条の 雲になりたい空に融けたい |
名前の無い人の形をしたものが 私の目の前を歩いて行く 減速して行く時間が怖い |
掌は何の痕跡も残さぬか 食事も排泄も執筆も殺害も |
揺れてゐる私の 支点を持たずふらつく暫し |
ふと日々の世界に感ず異和感を 書き連ねてみる呪詛と歓喜と 限界成すのは私の気性か |
負の遺産積もり積もって崩れ出す 消化し切れぬ教育と希望 |
病院の屋上に舞う烏達 まるで虚構の夕焼け空よ |
あのビルも墓標のひとつなのだろか 死後のことなど考へぬ墓標の |
火と燃えてゆく幾千年の叡智 消えた後には焦げ跡ばかり |
音も無く降りて来る夜ゆっくりと 肉体を闇に溶かして飛んで |