ブンゼン灯の中途半端な
  闇に照らされ川沿って行く
    あなたに立つ影追うか招くか
      異国の夜の一人相撲か
        吸い込まれてゆく石畳の上
          奥へ奥へと未知の既知へと



よく知ったアーチの下を続く道
  人通りの無い細めの舗道
    小さな博物館を横目に
      ひっそり静まり返った家並み
        私はここを知っている
          来たことがなくとも知っている
            ずっとずっと私を待って
              歌っていたのだか細い声で
                それを忘れていたのだ私は
                  来るまで気が付かなかったのだ私は
                    待たせたけれど契約をしよう
                      私の存在と約束を結ぼう
                        誘う儘に導く儘に
                          君と私がひとつになるまで
                            さあ歩き出そう一歩前に出よう
                              直ぐに全てを思い出すだろう
                                君は私で私は君で
                                  世界はこんなにも懐かしいのだから



月蝕を隠す雨雲違う闇
  垂れ込める夜殺したのは私



刻々と沈み行く陽と快い
  寒気を着込む秋の夕刻
    大きな寝床と化してゆく空



清流を思い出し尚徒らに
  時を浪費す労働者の我



境内の金魚の墓に雑草が
  生い茂り今は場所さへ判らず



フェンス越し隔たる町の風景が
  疎らに途切れ行く川向こう
    閉じ込めらるゝことは同じで



回復を待って静かに寝てゐたり
  無為飽食の太った芋虫



ブツ切りにした想念を突き崩し
  溜息ばかり吐いている夜



体より商品価値の無い男
  仰向けに寝る天の陽浴びる



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