陰影をドライインクで塗り潰す あってはならない心の動き |
焦っても何も出て来ぬ夜明け前 白い原稿に痛む虚脱感……… |
片隅に綿毛の様な茜雲 届かぬものと諦めて泣く やがて消え行く薄い大気へ |
「絵に描いた様な光景」と言いかける 所詮我等は記号の生き物 |
ずっしりと重い後悔抱き締める どう転んでも異邦人なら |
口髭を濡らす朝露冷たくて 口ばかり動く古城の怠惰 |
明るい夜異邦の港騒がしく 塩気含んだ固いパン食う 冷たい闇が寧ろ快適 |
どばどばと溢れ出す血を堰止める ことも叶わず歌い出す虹 |
紅葉が主張して来る輪郭を 許せぬ私山道をひとり |
切株にどんぐりひとつ置いてみる 虫喰った後の小さな種子を |