四ツ足で忍び寄って来る恐怖
  手懐けられずガブリと噛まる
    開いた記憶の不快な鼓動



風が出て猟奇の薫り運び来る
  割れた爪には釘打つ言葉



黯黒の呪詛が広がる高い空
  醜いき生者はぶよぶよと太り



断崖の一歩手前で立ち止まる
  昨日の夕食が思い出せない



振り向いた鏡に殺人者の瞳
  石の河原に仔猫の屍体



初桜屍臭運んで咲き誇る
  夜の宴へはシャベルを持って



不敵にも彼奴等 (きゃつら )は我の目を見たり
  ならばこちらは呑み込むまでだ!



静寂の中より出づる倦怠が
  夕陽となりて地を覆う山
    巨大な円の中の幻影



真っ赤に熱した鉄棒で
  健康なバナナをぶった切る
    石で砕いたマンゴーの実を
      ウツボの池に投げ遺りに捨てる
        腐ってやがるこの鳩の肉
          蛆虫共には蛆虫の餌だ



秋深まってゆく空に
  私の憂鬱も深まってゆく
    忘れていた闇が頭を擡げる



inserted by FC2 system