滲む空置いた毛先に白い山
  広がる蒸気に切れ目が輝き



血の夢を見ない静かな虐殺の
  記憶忘れて朝焼けに立つ



疥癬の様に蝕まれてゆく日
  鏡を見るのは最期でいいか



絞首台の様にぶらんとだれ下がる
  黒いクレーンの影が張り付く
    ぼやける地平は濁った赤煙



じわじわと虹のあわいへ溶けてゆく
  光静かに葬送したり
    彼方に望む希望の欠片 (かけら )



容赦無く責める光が脳を灼く
  昨夜の食餌がまた空腹を誘う



池の中沈めた首の目ばかりが
  ぎらぎら粘度高い深森
    私の墓地 (はかち )はここと定めむ



山が呼ぶ嵐の中の恐い森
  一瞬(しぎ )が引き裂ける夜



明白な堕落の後に狼が
  牙を剥いたり釘を手にして



夕立ちが来た後の夜満月の
  無風状態血が沸いて来る
    闇を探して大気の中へ



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