止まってしまった言葉を捜す
  (ふう )でもなくて我座る
    窓に映った姿にコメント



劇薬を含んだ水に身を浸し
  溺れ続けているよな気分
    胸の不快は飽食の所為か



車来ぬ車道の真中ぶらり行く
  取り残された夜の世界を



辞書が要る赤くうわんと脈打つ脳
  寒さに晒す子供の死体



残酷なかなしき悪夢に怯えつつ
  青春の狂気と共に流さるる
    小さな雪の塊に雨*



バラバラの記憶集めて繋がらぬ
  言葉に苛立つ忘れ易い我
    二度と復さぬ歌懐かしむ



熱を持つ寒さに皮膚がちりちりと
  焼ける午前の呪詛の連なり



鮮明になりゆく全に一がまた
  自己を主張すはかなき瞬間
    余りに豊かな無言の沈黙



容赦無く白く染め行く熱源に
  焦燥の影更に濃くなる
    まだ先へ続く地平線哉



死を前にしたる(ふう )でもない顔の
  水の無気味は已むること無し
    不可欠要件と知ってはいても






*この歌は改訂後の第2版。第1版は行方不明。


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