ざわめくか赤い心に葉が揺れて
  私を遠くに連れてゆく也
    貧相な山も深秘匿して



曇天に開く扉が口開けて
  凝っと待つ也我の行く先
    流れる景色の無言の黙視



弔葬の列が消え行く坂の向こう
  水子地蔵は渇いてゐたり



血を噴いた妖しい空に乳房垂れ
  細い稲妻天地繋げり
    黒く明るい僕等の墓標………



言の葉がカサカサと前通り過ぎる
  追へど届かず風だけが残る
    遠く見渡す曇り空の日



肌寒い乾き切ったる絶望が
  影を作れり日を遮って
    だけど何故だか穏やかな気分



潮風が町を崩して行った跡
  ぼろぼろと唯塊ばかり
    人間も唯残骸ばかり



垂れ込める重さ煤けて裏返り
  ひたすら白く染まれる世界
    収斂点へは悪夢の旅路



拮抗したる力同士が
  うねりうねって互いを呑み込む
    そしてやがては一方が勝ち
      新しい季節がやって来る………だが本当にそうだろうか?



灰色の目をした悪魔と語り合う
  鏡の向こうからやって来て
    風の最中に立つ我が友と
      海へ出ようか二人で舟で
        楽しそうだねと心底笑う
          何があっても二人は一緒だ



inserted by FC2 system