復讐を誓へど誰の名も無くて
  破けた手帳にシミ広がれり



言海の合意可能な領域を
  探して捲る不可視障壁



一人身の壁は益々厚くなりにけり
  夢と思へる十年の孤独



書も学も水の流れと心得 (こころへ )
  死所と定めし図書館の主
    我等の髄に言葉の残照



一国の恨み抱えてずるずると
  無為に陥る無策の頭
    挫折先取りして寝たるのか



人類の遺産を風化してゆくに
  任せる無能()だ元気也
    現在が風化するのも近し



肉を食ふ無辜の流れに壁立てる
  派手な遊技となりゆく因果



愚劣にも程があろうと言いた気な
  鏡の中の瞳に笑う
    一時凌ぎな義憤続くか



鈴蘭を束ねたやうなビルの窓
  冗談でしかない郷愁募る



黒煙は要らぬ後悔などせぬか
  焼けた車に天馬の死骸



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