吹き抜ける匂ひ軽くて憂鬱も
  軽くなりけり憂鬱なれど



血の色が少し浮き出た薄い皮膚
  日向に曝す自棄の船旅
    白波も唯現れては消え



鬱積を力に変えて歩く道
  撓め歪んだ笑い楽しく



要塞が動かずに贄待ち受ける
  陳腐の中に恐怖が隠れ



肉を食う何の感慨も無しに肉を食う
  血も骨も筋も去勢された!



遠い目をしたる学生の腹に猫
  落ち葉舞い散る空いた昼前



朝に似たまだ始まっていない様な午後
  雲は遠くに消えたと云うのに



亀裂呼ぶ鏡の中の反射光
  見入る私と見知らぬ世界



重い空鉛色した海に来て
  見慣れた退屈見るつまらなさ
    何処まで行っても同じ風景………



ぼうと影浮かべる鉄の絶望を
  見上げた夜の(はら )に失速………



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