日が落ちて静かな闇が降りて来る
既に終わった世界の胎児
明るい夜空に蠢く不穏
割れた正気に虫酸が走る
月
脅
(
おびや
)
かす暗い塊
零
(
ゼロ
)
蝕むか永劫の沈滞
轟音に卑小忘れて脱力す
気の遠くなる
明日
(
あした
)
の欠如
偽瞞
(
ぎまん
)
より逃れ出て来し少年を
迎えし偽瞞名は未だ知らず
夕食を怒りに任せ摂った日の
後悔はまだ湿った寝床に
山間の霜を透かして見ゆる
朱
(
アカ
)
融けて無くなる拙き記憶
振り向いた平たい空が白けたり
低い地面が不様に這って
片目出す天の形が逆走す
来たる満月が恐ろしい也
籠に入る陽光を我手探りで
捻り潰してやらむ無思慮に
断片の切り貼り細工と化した街
窓を求めて彷徨うばかり