気圧の差叩き付けらる雨の中
  強く抱えた淵黒々と
    広がる我の屍体流して



眼下には沈む世界の残骸の
  影が伸び行く美しき夜



幻惑の茜が大気満たす(とき )
  ふと蘇る遠い風景



重畳 (じゅうじょう )を成して焼けたる逢魔刻 (おうまがとき )
  呼べる大気に全身で応へる



光の膿をぎゅっと絞った
  様な濃度のオレンジ色に
    かあんと響く忌はしき記憶
      溶け出した戦慄に涙も出ずに



(まが )つきの赤い光に融合す
  ふたつの世界が喰ひ合って闇



濃紺の空を梳き染むオーロラに
  全身で悟る「これは偽りだ!」



むくつけき見るに耐えない星に目が
  開いて声を出さずに笑う



(あだ )な花輝かせて咲く大都会
  一、二の三で飛び込んだ火口



強風の中に混じった雨垂れを
  舐める如何わしい味がする



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