収縮を繰り返す皮膚掌で
  そっと確かむ卵の卵



濁り雲紺の夜空を掻き混ぜて
  月が去ってゆく意識が薄れる



深々と下げた頭に惨めさを
  感じる夜の電話の向こう



静かな目してゐるをんな街灯の
  下に小さな雪解けの跡



石牢 (いしろう )の隅に積もった影踏んで
  踊り回った我はハムレット



手の中で脈打ったペンぎょっとして
  我が子の生命 (いのち )顧みてみる



散文が邪魔して歌が生まれ来ぬ
  固まった脳がねっとりと糸を引く



秋が来て吹き飛ばされた夏の滓
  腐汁に(まみ )れてぐちゃぐちゃと転がる



上を見てずり落ちる空の白の下
  昏い予感が沈澱してゆく



風の中はしゃいで回る不穏の塊
  楽しいか
  楽しいか
    惨劇を待ち望む



inserted by FC2 system